憧れのVanLife27 Goodbye Death Valley!
モーターホームのレンタル会社のクリスタルは、「このクルマはまったく電源に繋がなくても、ソーラーシステムで5日間ほど冷凍庫、冷蔵庫が使える」と言った。
そしてその言葉をそのまま受け取った自分が馬鹿だった。
今回、レンタルしたモーターホームにはいろいろなメーターが付いている。それは普段、自分が日本で乗っているヴァンも同様である。
そのメーターの中に、バッテリーの使用状況が判るメーターがあり、朝、起きてみるとそのメーターは10.5Vを示していた。
ご存知のようにクルマのバッテリーは12Vである。電源に繋いだり、ソーラーがフル活動している時には、13V以上の数値が出るが、昨夜は電源に繋いでいないし、もちろん夜はソーラーチャージされない。おまけに冷凍庫、冷蔵庫に加え、カメラやスマホ等のバッテリーの充電もしていた。
その結果、一晩で電力が落ちたのである。
たしかサブバッテリーが10Vを切ると、復活するまでにかなりの時間がかかるし、復活しても消耗度が高くなると聴いた記憶がある。
しかし厄介なことに、冷凍庫も冷蔵庫もON/OFFのスイッチが付いていない。
とりあえず設定をもっとも高い温度に上げる。
ちょっと焦り始めた時に太陽が顔を出した。
するとソーラーチャージが始まり、メーターの数値がどんどんと上がり始める。
多少は「盛られたが」、クリスタルの言ったことは100%嘘ではなかったみたいだ。
しかしそれでもクルマを走らせると、ソーラーに加え、よりサブバッテリーが充電されるので、朝食の後、ストーブパイプの近くの「メスキート・サンド・デューン」までクルマを走らせる。
駐車場にクルマを停め、トレッキング・シューズに履き替え、歩き始める。
砂漠に入っていくと、最初は無数の足跡が砂の上に残っていたが、トレイルの奥に歩を進めて行くと、その足跡が極端に少なくなっていく。
観光客の姿もまばらになり、やがて視界から人の姿が消え、自分の足跡以外に、人の痕跡がなくなる。
かつてカリフォリニアが「ゴールドラッシュ」で湧いた頃、ある男たちが近道をしようとして、この広大な谷に迷い込んだ。
彼らは荷馬車を捨て、数頭の牛を殺して食料とし、なんとかこの谷から抜け出した。
そして脱出の際に、自分達を散々苦しめたその谷に向かって「Goodbye Death Valley!」と叫んだと言われ、それがこの広大な国立公園の名の由来とされている。
海抜下86メートル、夏には50度も超えることもあるデスバレー。こんなに広大な砂漠が広がっているということは、水もほとんど確保できない。ここに彷徨いこんだ男たちの、恐怖と労苦が、この砂漠を歩いていると手にとるように解る。
3時間ほど砂漠を歩き、停めてあったヴァンに戻る。電源メーターを確認すると、強い陽射しで13.4Vを示していた。
どうやら無事にバッテリーも復活したようである。
室内に熱がこもっていたので、ドアを開け放ち、簡単な調理をして車内でランチを食べる。
この広大な国立公園内でまともに食事ができるのは、たった2軒のレストランで、しかもかなり高額だ。もちろんコンビニもなければファミレスも存在しない。
まさにVanLifeというスタイルが、ここを旅するのに適しているのである。