VanLife 日本の旅Vol.9 糸島で暮らしの多様性を考える
「福岡の糸島というところは、アメリカの西海岸や日本の湘南を思わせる雰囲気があり、かなりイイ感じのビーチタウンみたいっすよ」
この5Lakes&MTのサイトを管理する友人のTonpeiちゃんが、今回の旅に出る前に説明する。
「その糸島に、ボクのデジタル関係の知り合いが、会社ごと引っ越して、そこでIT関連の仕事の他、エアビやキャンピングカーのレンタルとかもしていて、もし福岡方面に行くなら、トウキチさんにも会って欲しいんですよね」
前々回のこのブログでも言ったが、一応、最終目的地は熊本の阿蘇である。阿蘇の外輪山を自転車で走ることが、今回の旅の目的のひとつでもある。
佐賀の有田焼の町で、コスモでクリエイティブなカナディアンとの出会いの後、 Tonpeiちゃんの勧めによって、我々は糸島に向かった。
さきほど Tonpeiちゃんは「エアビやキャンピングカーのレンタルとかもしていて・・・」と言ったが、ご存知の方も多いと思うが「エアビ」とは「Air bnb」のことを言い、転じて「民泊」の総称する言葉になっている。
Tonpeiちゃんの仕事仲間であるSGさんのオフィスは、糸島の美しい海岸沿いの、ビーチハウスが立ち並ぶ町の一角にあった。
そのビーチハウスの町は、どこの家のバルコニーからも、そのまま釣りができるのではないか、と思わせるほど、眼前に静かな海が迫り、 Tonpeiちゃんが言うように、LAのサウスベイ辺り、レドンドビーチを思わせるような風情が漂っていた。
SGさんをボクに紹介するという言い訳を付けて、福岡にプチ旅行にやってきたTonpeiちゃんと落ち合い、SGさんの会社が管理するエアビの一軒の家で、SGさんとお会いした。
その家に入っていくと、一階のフロアが寝室2部屋と風呂場になっており、2階に上がって行ってリビングルームに入って行くと、広いバルコニーの窓から、糸島の美しい海が拡がっていた。
「VanLifeも快適だと思いますが、今夜はこの部屋を使って下さい!」とSGさんは少年のような笑顔を浮かべる。
Tonpeiちゃんから、デジタル関係以外に、手広く事業を展開していると聞いていたので、なんとなく腹の出っ張った、ちょっと怪しい不動産屋みたいなイメージを勝手に思い描いていたが、SGさんは驚くほど若く、どこかのスポーツジムのインストラクターのような雰囲気である。
「実はボクも古いハイエースをカスタムしたVanに乗ってまして、明日、トウキチさんのクルマとボクのクルマ、それに福岡のレンタルキャンピングカーを並べて、こっちにいる仲間に見てもらおうと考えているんです」
爽やかな笑顔を浮かべながらSGさんは続ける。
「こんな時期じゃなかったら、多くの人に告知してトークショーとかやりたかったんですが、日中、クルマを少し見てもらって、その後、夕方からZOOMを使って、トウキチさんと対談できればいいなと思っています」
Tonpeiちゃんから、福岡に行くならSGさんに会った方がいい。そしてSGさんに会うなら、ちょっとしたイベントもした方がいい。と出発前に言われていたが、なるほど、こういうことだったのね。
翌日、SGさんの義理の弟さんが運営するキャンプ場に行くと、すでにSGさんのハイエースと、レンタル用のキャンピングカーが展示されていたので、指示に従ってその横に我がタコバスを並べる。
そしてそのキャンプ場の海に面した堤防に座って海を眺めていたら、「ちょっと中を見せてもらえますか?」と、SGさんの仲間がパラパラと現れ、3台のクルマを見比べて行く。
少し雑談を交わすと、SGさんの弟さんも含め、ほとんどの人が首都圏からの移住組のようである。
どうやらSGさんは自分と自分の会社のみならず、友人、知人をも巻き込んで、この糸島へ移住してきたみたいだ。
とくになにをするでもなく、来た人たちと雑談を交わすゆるーいイベントが終わり、我々はZOOMを使って、小一時間ほどのオンライン・イベントを開催した。
そのイベントの中で、 ボクがVanLifeを始めたきっかけ、この旅の目的などを語り、逆にSGさんが友人、知人を巻き込んで、この糸島に移住してきた経緯などを聞いた。
「実はボクは茨城の出身で、今でも茨城には老いた母が一人で暮らしています。」とモニターの向こうで、SGさんは真剣な表情で話す。
「こっちに来て一緒に暮らさないか・・・とボクは提案するんですが、あの年齢になると、住み慣れたところを離れるのは難しいですよね」とSGさんは苦笑する。
「でも実は、ここから福岡空港までクルマで30分くらいなんです。で、そこから飛行機で茨城まで1時間。つまり2時間ほどで母親にも会いに行けるんですよ。」
SGさんはまた元の笑顔に戻った。
「それに福岡空港からソウルまでも1時間ちょっと。ある意味、東京より便利かもしれないですね!」
ボクも26年前に首都圏から河口湖に移住した。が、当時は、どうしても東京を中心に捉え、そこからの移動距離や時間を考慮した移住であった。
だが今では東京を中心とする枠組みを完全に離れ、公私ともに、自分の行動半径と価値観の上で、いろいろなところで暮らす人々がいる。そしてさらにはそこをベースとして、VanLifeの旅などを謳歌している。
タコバスの側面に書いているスローガンを再び噛みしめる。
[Home is where you park it]