時間のプレゼント

COLUMN

2018年06月22日

今から32年前、長女が生まれた記念に、初めてフルマラソンを走った。場所は奇しくも、己が終の棲家と決めた「河口湖」。当時は世田谷区の用賀で暮らしていたが、なにかの縁を感じたのだろうか?

 その初めてのマラソンを3時間45分で完走し、その後、通常ならそのタイムを少しでも縮める
為に、より走力を付けて行くが、ボクの場合は「もっと長い距離にチャレンジしたい!」との思いが強く、トライアスロン、さらには過酷なアドベンチャーレースへとシフトしていった。

 ところが92年に参加した「レイドゴロワーズ」オマーン大会では、初日から乗馬のトラブルで足の小指の骨を折り、それでも大金を出してくれたスポンサーの手前、中途半端にリタイヤする訳にも行かず、食うや食わずの状態で足を引きずり、なんとか12日間、レースを続けた。

 もうこうなると、なんのために、誰のために、チャレンジを続けているのかまったく分からなくなり、また原点に戻って、マラソンを走り始めた。

 特に95年に河口湖に移住してからは、毎年、11月末に地元で開催される河口湖のマラソンを走った。

 自分が生まれた時に父親が走ったエピソードを、散々、聞かされ、しかも中学生の頃から「走れ、走れ」と尻を叩かれていた娘は、その反発からか、ランを趣味としなかった。

 そんな彼女もいつの間にか二児の母親となり、次女を産んだ後から本格的に走り始めた。もちろん理由は美容とダイエットである。

 ところが走ることを日課とするうちに、ママ友で走る仲間を見付け、自らレースにエントリーをして走るようになった。

 一昨年の正月には一緒にタイのクラビを旅したが、毎朝、娘と一緒にビーチを裸足で走ったことは、とても素晴らしい旅の思い出となった。

 先週の日曜日(注:2018年6月17日)、5LAKES & MTの河口湖店オープン記念のイベントが開催された。ハーブフェスティバルが開催されている、湖畔の2つの公園を巡るランニング・イベントだ。

 そのイベント開催を知った、我が家の隣の別荘に住む、イギリス人の父息子が二人で参加してくれた。

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 我が娘も、ラン&ママ友を誘って参加してくれた。

 梅雨時期の中、奇跡的に晴れ間が広がり、雲の中から美しい富士山の姿も見られ、参加者、約30名と気持ちよく10キロを走りきった。

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 ボクの後ろではイギリス人の父息子が、走っている間、ずっと楽しそうに会話を続け、我が娘たちのグループも楽しそうに走っていた。

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 走り終わった翌日になって、その日は「父の日」であったことに気付いた。モノをプレゼントすることは簡単だ。もっとも「父の日」であることを忘れなければ。

 ところが父が開催したラン・イベントに参加すること。しかもラン仲間を伴って参加することは、それを日課としていなければ不可能だし、そういう環境を時間をかけて作らなければ、実現できないことである。

 娘が生まれて32年。これまでに忘れずにプレゼントをくれた年もあれば、そんな日なんて最初から存在しないみたいに、なんの言葉もない年もあった。

 だが今年の「父の日」、娘が贈ってくれた素敵なギフトは、生涯、忘れ得ぬ思い出となったのである。