自分にとっての100%は、他人にとっての100%ではない

COLUMN

2018年08月22日

河口湖での暮らしも今年で23年目を迎え、家のあちこちが傷み始め、気がついたところからメンテンナスを施している。特に湖を眺めるデッキは殆どが木製で、風雨に晒されて傷みが激しかったので、今年の春にリフォームした。

「7割ほどを本職の大工さんに建ててもらい、あとの仕上げは自分たちでやる」

23年前に自宅を建てる際に、工務店にこのような希望を出した。

残りの3割を自分の手で仕上げることを選択したのは、予算が足りなかったことが大きな理由だったが、それ以上に、自分の好みの家にしたかったからだ。

例えば家の壁は乱雑にスタッコ塗りで固めたが、これもプロにお願いすると、均一的なデザインになってしまう。機能的な面で言うと、キッチン・シンクのカウンターは日本人の平均的な身長を考慮すると85センチの高さが望ましいとされているらしい。だがボクは平均より背が高いので、キッチン・シンクのカウンターの高さを5センチ高く作った。わずか5センチだが、それでも洗い物や調理の際に腰が随分とラクになった。

このように家に限らず、「モノ」というのは最大公約数によってデザインされ作られている。

平均的な身長、手の大きさ、腕の長さ、足の長さなどを考慮に入れて、そこからベッド、椅子、トイレに至るまで、様々な「モノ」が作られている。

従って平均的なサイズや用途がぴったりと適する場合もあれば、人に拠っては「この部分がもう少し大きいほうがいい」とか「この部分は必要ない」というケースも生まれてくる。

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5Lakes&MTが手がける商品は、ほとんどがアパレルではあるが、例えば「トレイルサンダル」などは、ファッション性より機能性が求められる「道具」である。

実は2011年から自家製のワラーチで走り始め、それから何足ものワラーチを試作してある程度の完成形を作った。それらの経験を元に「トレイルサンダル」が生まれたのだが、紐の結び方が難しいという意見をいただくことが多い。元々、ワラーチで走り慣れたランナーなら、なんとか工夫をしてくれるみたいだが、初めてこの「トレイル・サンダル」で走るというランナーは、その扱いに苦労しているようだ。

で、次のモデルは、もう少し簡単に装着できるようなアイデアを出しているのだが、100%の完成形を作るのはどうなのか? という自分自身の懸念も残る。

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というのは、自分にとっての100%は、決して他者にとっての100%になるとは限らない。数%ほどの余地を残してモノを作る方が、それを手に入れた人が、自分でカスタマイズして完成形に仕上げ、そのモノが確実に生きてくる。

ファッションの「ど定番」であるブルージーンズがその最たる例である。

ジーンズは様々なシルエットが存在するが、靴や上着など、それを履く人が組み合わせをアレンジしてファッションを完成し、その色合いや風合いも、時間の経過と共に自分なりにカスタマイズしていく。もしもブルージーンズが色褪せなかったら、ここまでファッションの定番アイテムにはならなかっただろう。

防水性や防風性、あるいは透湿性や速乾性と云った機能も、完璧なモノではなく、それを身に着ける人のひと工夫に拠って完成形となれば、結果的にはその人の満足感も高いのではないか。なぜならばその工夫の時点で、その商品が「世界でたった一つ」の商品になるからだ。

「トレイルサンダル」に限らず、そんな商品をこれからも提案していきたいと思う。

あくまでも主人公は、その商品を手にしたカスタマーなのである。