憧れのVanLife4 ドアが開かない
20年以上も前のアメ車、しかもあれこれ装備が積み込まれたヴァンなので、いろいろなトラブルが発生することは覚悟していた。
大きなエンジントラブルはないかもしれないが(いつかは起こるかもしれないが)、細かい箇所はあれこれ不具合が発生するだろう。
神戸までクルマを引き取りに行き、帰りにサービスエリアでさっそくVan Lifeを楽しんだことは、すでにこの連載の第一回目で報告した。
で、車内で簡単な朝食を取り、さあ出発という時に、助手席後部のサイドドアが開かなくなった。中から開けようとすると、スムーズに開くが、外からだと反応しない。
とりあえず助手席から手を伸ばして開閉するようにした。
自宅に戻り、いつもクルマを整備してもらっている稲村オートにVanを持って行った。稲村オートの社長である稲村さんは、社長兼、整備士兼、アカウントマネージャー・・・つまりたった一人で修理工場を運営している。で、ソロキャンプに強い憧れがあり、そのことについてあれこれ質問を受ける。
チョーがつくほどフットワークが軽く、チョーがつくほどいい人だ。
「稲村さん、カヤックを積んであるトレイラーのタイヤがパンクしたんだけど、スペアタイヤを見つけてくれる?」なんてお願いしたら、翌日には「現場に行って、タイヤ交換しておきました」なんて、スーパーなことを平気でやってくれる。ボクのカーライフには欠かせない存在なのだ。
稲村さんは、ボクの新しい相棒をしげしげと眺めながら、「へえ・・・すごいなあ」と連発している。
「へえ・・・すごいなあ」の言葉の真意には、素直に「いいな」という意味も含まれているが、どちらかというと「こんな厄介なモノを買ってしまって」という意味も、少なからず含まれている。
「とりあえず雨漏りを修理しなきゃいけないけど、帰ってくる途中にドアが開かなくなって」と言いながら、助手席から手を伸ばしてリアのサイドドアを開けようとする。
「こうやって中からは開くんだけど・・・」
開かない。
ついさっきまでは中からは開いたが、今では中からも反応しない。
「うーん、ちょっと診てみましょう」と、稲村さんは優しい笑顔をこちらに向ける。
サイドドアのパネルを取り外し、ドアラッチのコードを辿って行って、稲村さんは言った。
「ドアラッチの接続部分がプラスティックで、それが割れちゃってますね!」
なるほどそういうことか。
事前にネットで古いアメ車のことをググった時に、樹脂やゴム関係は経年劣化で、早晩、交換が必要になると誰かがブログに書いていた。油脂の漏れは当然のこと、ブレーキや電気系統にも気を付けろと。
心配事は富士山ほどある、ということだ。が、まずはドアの開閉のことを考えなけれならない。
幸いなことに、今ではEbayという便利なサービスがある。
年式、型式を入れれば、いろいろな部品が出て来る。しかもアメリカから送られて来る割には、送料は2000円ほどで、約1週間から10日で手元に届く。
ボクはさっそく必要な部品をオーダーした。
「おそらく次から次へと壊れて行くので、ついでに他のドアのラッチもオーダーしておいたほうがいいかも」
稲村さんは柔和な笑顔で、恐ろしいことを助言してくれる。
そしてその稲村さんの助言どおり、次から次へとドアが開かなくなったのである。
あゝ・・・アメ車、恐るべし。