憧れのVanLife17 台風騒動

COLUMN

2019年10月15日

先週末、日本列島を大型の台風が襲った。

多くの犠牲者が出て、家屋等の被害も甚大なモノになった。一刻も早い復旧、人命救助が望まれるが、実は、我が家は土石流危険渓流内に位置しており、台風に限らず大雨などが続けば、土砂崩れの可能性の高いところだ。

今から50年ほど前の、1966年9月25日。台風24号の影響による連日の雨で、この辺りいったいの雨量は270ミリを記録した。そこへさらに台風26号が追い打ちをかけ、西湖の東西の集落で土砂崩れが発生し、250名ほどの死者が出た。

西湖、河口湖周辺の山々は、かつての湖底が隆起して出来上がった山々なので、元々、地盤が緩いのである。集中的に雨が降れば、どこで土砂崩れが発生しても不思議ではない地域なのである。

だが95年に移住してきて、これまでの24年間はまったく問題なかった。むしろ山に抱かれているせいか、強風の直撃もないし、高台になっているので、雨の浸水の心配もなかった。

だが台風当日、ニュースを注視していると、今回の台風は「これまでに誰も経験したことがないような被害が出る」と何度も警告している。

富士五湖地方の台風上陸予想時間は19時。あと2時間半である。

だが今回も避難する意思はなかった。そのもっとも大きな理由はスパーキーの存在である。大きな犬を連れて避難するのはかなり面倒である。

外を見ると、風はそうでもないが、雨がどんどん激しさを増す。テレビではアナウンサーや気象予報士などが「命を守る行動をして下さい!」と連呼する。

すると娘や息子から連絡が入る。

「実家に避難指示出ているけど大丈夫?」と娘。「せめてキャンピングカーに避難すれば?」と次男。

たしかに重量4トン近い我が愛車に避難することはすでに考えた。スパーキーも一緒に居られるし、我が家の近くには「道の駅」があり、そこは土砂崩れも浸水の可能性も低いみたいだ。が、しかし! 前回のこのブログで報告したように、我が愛車は現在、入院中である。

さあ困ったどうしよう・・・

しかも、湖畔の道が走行可能かどうか判らない。

そのタイミングで「カーン、カーン」と、地元の消防団のサイレンの音が豪雨の中で僅かに聞こえてきた。

ということは、湖畔の道はまだ走行可能ということだ。

ボクはPCを開き、近くの安全そうなホテルを検索した。

広い平面駐車場があり(スパーキーをクルマの中で待機させ、簡単に散歩等に連れ出すことが目的だ)、周囲に山や川がないこと。それらを条件に検索すると、一軒、手頃なホテルが見つかった。

すぐにそこを予約して、必要な荷物だけバッグに押し込み、家を出る。

「もし避難するなら、家のブレーカーは落として!」と娘から助言を受けていたので、ヘッドランプを首からぶら下げ、最後にブレーカーを落として、真っ暗な家を飛び出す。

スパーキーとクルマに乗り込む僅かな時間で、全身がびしょ濡れになる。だが、完全防水のレインウエアを着用しているので、雨は気にならない。

クルマで湖畔の道に降りて行く。そして目的のホテルへと走らせるが、予想に反して、湖畔の道はかなり冠水している。

さっきの消防団のクルマはどこを走っていたのか? そんなに遠くはないはずだ。

3度ほど、自分の走るクルマが冠水箇所で大きな飛沫を上げ、前がまったく見えなくなった。

緊張で喉の奥がくっつきそうなくらいに乾いている。

ようやく湖畔の道を抜け、町に向かって無人の道を走る。ほとんどクルマの通りはなく、まるでゴーストタウンである。

無事にホテルに到着した。

フロントまで行くと名乗らずとも「木村様ですね」」と尋ねられた。さらに「避難ですね」と。

予約の住所を見れば、先方にはお見通しなのである。

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ホテルでの快適な一夜の後、早朝からパトロールに出る。

まずはホテルに近いところにある、5Lakes&MT河口湖店の確認。無事だ。
次に自宅に戻る。まったく問題ない。

最後にノームに行って、前日に湖畔よりかなり上に移動したカヤックを確認する。

だが昨日まで水辺まで30メートルの距離があったカヤックは、3分の1ほど水に浸かっていた。

良かった・・・前日、土砂降りの中、この移動作業をしていなかったら、今頃、40艇のカヤックは湖の底かどこかに漂っていたかもしれない。

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湖でさえ、一晩でこんなに増水する。これが川なら、氾濫することも想像に容易い。

こうして、なんとか今回の台風を乗り切った。

我が息子の指摘どおり、我がVANがあれば、もっと手軽に避難活動ができたかもしれない。
そういうこともいつかは経験することになるだろう。

そしてそういう緊急時にこそ、これまでに培ったアウトドアライフや、今後のVan Lifeを役立てなければならないと思う。

それこそが本来の目的なのだから。